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2007/09/09 (Sun) 風の旅 萩相島灯台



やがて台風の季節が到来する。
日本列島を舐めるように縦断する台風の進路には、
佐多岬、足摺岬、室戸岬、潮岬、御前崎、犬吠埼などの岬がある。
それら著名な岬だけでなく、
先島諸島の珊瑚礁の海から、オホーツクの流氷の海まで、
数多くの岬にはひっそりと、
しかし重要な使命を負って大小の灯台が立っている。
台風など、自然の猛威を真っ先に受けるのは岬であり、灯台だ。
自然の猛威は台風だけではない。北の海では吹雪も濃霧もある。
灯台は厳しい自然条件に耐えながら、
船舶の安全な航行と船人の命と財産を守って灯をかざし続けてきた。

船、海、岬、灯台とくれば、私が好きな演歌の世界だ。
演歌の主人公は哀しく、運命にもてあそばれ、
人生に迷い、心に傷を負っている。
それを振り切り、捨てに行くのは
岬の突端、断崖絶壁が相応しいのだろう。
見守ってくれるのは白亜の灯台だ。行き止まりの岬に立つ灯台は、
行き詰った人生の道しるべか。
半島や離島の岬に佇んで感じる孤独感、寂寥感のなかで、
厳しい自然に耐えて立つ灯台を眺めれば、演歌の主人公ではなくても、
進むべき人生を考え、強くて優しい生き方を教えられるだろう。


私には、人生を彩ってくれるワインと旅がある。
それだけで十分だったのに、灯台の魅力を知ってしまった。 
「灯台巡回号」と名づけた愛車で灯台めぐりを始めて二年。
九州や山口の灯台を中心に五十余基の灯台を訪ねた。
五月には七日間をかけて、北海道の灯台五十七基を訪ねて来た。
岬の先端の灯台に車を停め、夕陽を眺め、ワインの栓を抜く。
飽くこともなく光芒を見つめ、やがて眠る。潮騒に起こされ、
朝日に輝く灯塔に敬礼して灯台を辞す。
私の最高の贅沢、無上の悦びだ。

日本最東端の納沙布岬の朝は感激した。
灯台の傍らに停めた車で朝を迎えた私は、
その日の朝を日本で一番早く迎えたのだから。


私が住む下関は、由緒ある灯台の宝庫だ。
芸術品のような角島灯台。風力発電第一号の蓋井島灯台。
西日本で現役最古の灯台も下関にある。
六連島灯台(明治四年初点灯)だ。
六連島灯台は、明治天皇が西郷隆盛らを率いて最初に行幸した「誉れの灯台」だ。
市の文化財に指定されているのに、
敷地は荒れ放題で、行幸記念碑は薮の中だ。なんとも情けない。

関門海峡航路で六連島灯台と対を成す灯台がある。
部埼灯台(明治五年初点灯・北九州市)だ。
共に、灯台の父と呼ばれるブラントンが設計した双子のような灯台だが、
整備された部埼灯台と対象的に、
下関市から冷遇されている六連島灯台を見るのは辛い。
いい灯台なのに‥‥。


船乗りにあこがれながら夢を果たせなかった私は
灯台を眺め、灯台から海を眺めることで、
船と、海と、私を、直列に繋ぐことができる。
航行技術の進歩は、もはや灯台の灯りを必要としないらしいが、
岬の先端にあるべきは、やはり、灯台だ。


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